留置場生活1日目②
留置場には7つの部屋がありました。僕はその中の一番手前の部屋である一号室で過ごすこととなりました。
部屋は全体で4畳くらいでしょうか。真ん中に3畳の畳が敷かれ、その周りを木床で囲われてます。
入り口から見て右斜め角にコンクリートで覆われた小部屋があり、そこがトイレです。
トイレは自殺防止の為の措置が色々となされています。まず便器は割ることができないように床に埋め込まれています。
トイレットペーパーは中の人が自由に扱えないよう、ロールは部屋の外に設置されており、細長い小窓からトイレの中にペーパーの先だけ出ている状態になってます。
トイレのドアは長方形ではなく、上辺が斜めになっています。これは、トイレのドアに紐をかけて首吊り自殺を防止する為です。
トイレにも外から見える窓があります。下だけ隠れているので、している所を見られることはありませんが、プライバシーはほぼゼロです。
僕が留置場に入った時間はちょうど夕飯の直前でした。留置場の部屋に入ると、先住の若い兄ちゃんに話しかけられました。
直前に刑事から「私語厳禁」と聞いていたので最初少し戸惑いましたが、無視をして関係を悪くしても良くないと思い、少し会話をしました。
お互いの名前、年齢、どんな罪を犯したか等を話したと思います。
後から分かったことですが、「私語厳禁」とは言われているものの、小声であれば留置場の担当官(みんな担当さんと呼んでいます)も特に咎めないそうです。
留置場内での話の内容は、だいたいが「どんな罪を犯したか」「裁判の進み具合」です。
相手の詳しい身の上や他人の話をすることはほぼありません。暗黙の了解で、なんとなくお互い触れにくいのでしょう。
若い兄ちゃんとしばらく話していたら、夕飯の時間になりました。夕飯は廊下に面している鉄格子の一角にある、小さな小窓から入れられます。
食事はいつも決まって、白米、おかず、野菜、お漬物が入ったお弁当です。それに、インスタントのお味噌汁が付きます。
インスタントのお味噌汁は、自分で味噌を容器に入れて、後から担当さんにお湯を入れてもらいます。ただ、担当さんがいつもドバドバお湯を入れるので、かなり薄味の味噌汁に仕上がります。
食事は割と美味しかったです。おかずも毎日日替わりで、ハンバーグや唐揚げ、魚とバリエーション豊かでした。
特段冷たくもなく、ほんのり温かかったです。
近所のお弁当屋さんで買ってきたお弁当を家で食べる時、ぐらいの温かさです。
初日は全く食事に手をつけられない人も多いそうですが、僕は全てたいらげてしまいました。
食事が終わると空いた食器を小窓から担当さんに返し、自由時間です。自由時間と言っても特にすることはありません。
ぼーっとしています。
長く留置場にいる人は、差し入れで本を持ってきてもらったり、留置場内で買えるノートに日記を書いたりして過ごしていますが、僕は初日なので何もありません。
ただ、新聞が一日一回各部屋を回ってきます。ちょうどその日は一号室が最後だったので、新聞を読んで過ごしていました。
新聞を読んでいると、一部黒く塗りつぶされている箇所がありました。若い兄ちゃんによると、ここの留置場にいる人の事件に関する記事は担当さんが塗りつぶして読めなくしているそうです。
黒く塗りつぶされている記事は社会面の教育に関するページでした。
僕は自分のことのような気がしてきて、一気に変な冷や汗が出て止まらなくなりました。